誰もいない冬の上高地へ

年明け直後の1月6日。LOGメンバーで撮影担当の長田が上高地へ向かいました。
渓流釣りやパックラフトでの川下り、そして冬山登山までLOGメンバーの中でもガチ寄りな長田ですが、冬の上高地は自身初。
夏場は観光客で大混雑する上高地ですが、冬はいったいどんな様子なのでしょう。
今回は、LOGメンバーの鈴木と笈川が、長田からいろいろ聞き出す座談会形式でお送りします。
鈴木:そもそもなんで冬の上高地だったの? 行ったっていう人、周りにオサ(長田)さん以外いないんだよね。
長田:小学生低学年のときに親に連れられて上高地に行ったんですよ。そのときに見た景色が頭から離れなくて、大人になった今でも夏の縦走のときとかに通るんですけど、やっぱり良いなあと。その時にふと思ったんです。「冬の上高地ってどうなってるんだろう?」って。
笈川:夏はめちゃくちゃ混んでますもんね。そのギャップを体験したかった感じですかね。とうぜんバスは走ってないわけですよね? どういうアクセス方法になるんです?

長田:釜トンネルの手前に坂巻温泉さんというところがあって、そこに駐車だけさせてもらって入った感じです。
笈川:日本秘湯の会にも入ってるとこだ! 行ってみたいんですよねえ。でも宿の人とかにびっくりされないんですか? どこ行くの? みたいな。
長田:そんなこともなくて、けっこうスノーシューの日帰りツアーとかもやってるみたいで、その日もチラホラ見かけました。
鈴木:そこから歩き出したと。
長田:坂巻温泉からは釜トンネルまで歩いて30分くらいですね。
鈴木:冬の釜トンネル、めっちゃ怖いって聞いたことある……。
長田:そうそう。ただ実際に行ってみると、真っ暗というわけではなくてうす〜く灯りがついてるんです。その先の上高地トンネルのほうが真っ暗でしたね。
笈川:たしかに写真も幻想的で、むしろ美しいですね。


鈴木:そこから上高地まではどんな道なの?
長田:ずっと林道歩きで、除雪も入ってたんですごく歩きやすかったですよ。写真撮りながらでも2時間半くらい歩くと上高地バスターミナルに着きました。
笈川:ラッセルとかじゃないんですね。傾斜もゆるそうですし。
長田:高低差的にも登りが288mしかないし。ただ、トンネル抜けたあたりは雪崩る危険性がある箇所なので、そこは注意してました。
鈴木:どんな装備が必要なの?
長田:冬用の登山靴と12本アイゼンも用意していたんですが、当日の天候とか路面状況を見て、結局はスノーブーツとチェーンスパイクの組み合わせにしました。それプラス、上高地に入ってからのハイクやテン場の整地などを考えてワカンはザックに取り付けました。
笈川:いわゆるライトな冬山登山くらいの足元で行けるんですね。
鈴木:テントはどこで張るの?
長田:小梨平キャンプ指定地ですね。梓川のきわきわに張りました。
笈川:許可とかはいるんですか?
長田:冬期に関してはとくにいらないです。冬期トイレも使えますよ。

鈴木:上高地っていうと、最近インバウンドの影響もあって、ものすごく混んでるイメージしかないけど、冬はやっぱり人少ないの?
長田:少ないというかほぼ無人ですね。会ったのは2人だけでした。
笈川:河童橋の写真ありますけど、こんなの見たことないですね。
鈴木:上高地独占。
長田:まさにそう。見たことがない景色を撮影したくて行ったというのも大きかったんで、着いたらずーっと撮影してました。
鈴木:話だけ聞いてると意外と俺でも行けそうな気がしてきたけど、やっぱり寒いでしょう?
長田:ジッとしてたらやばいんで、常にウロウロしてる感じで(笑)。でも、それだけでも被写体には困らないんで撮影はすごく楽しかったですね。


鈴木:とうぜん小屋とか売店なんてやってないんでしょ?
長田:そうですね。食糧とかはぜんぶ自分で担いでいきました。カメラ機材もあったんでけっこう重かったですね。20kgくらいですかね。
笈川:それは重いですね〜。でも、PPU STUDIOSの50Lバックパックって、そんなに入るのっていうのは意外でしたね。機材はどのくらい持って行ったんです?
長田:カメラと三脚とレンズを3本。
鈴木:3本!?
長田:風が吹くことも想定していたんで三脚もかなりしっかりしたものを持って行ってました。予備バッテリーなどもあったんで、それをある程度削れるのであれば、通常の冬山テン泊くらいの12〜13kgくらいには抑えられると思いますけどね。
笈川:オサさんはLOGメンバー随一、というか唯一? のガチ勢ですからね(笑)。冬山とかも行ってますもんね。
長田:そんなにハードなのはやってないけど、八ヶ岳とか谷川岳、上州武尊岳とかのノーマルルートって感じですね。


鈴木:さて、いよいよ夜が来ると。
笈川:寒そう〜!!
長田:スタート時点はマイナス5度だったんですよ。その日はマイナス10度くらいまでしか下がらない予報だったんで、そこまで寒くないかなと思ってたんですが、いざ蓋を開けてみたらマイナス15度くらいまで下がっちゃって……。
笈川:ひーーー!
長田:厚手のダウンジャケットを着て、ダウンパンツ、ダウンシューズ、グローブとフル装備で寝袋に入ったんですが、寒さ対策はもうワンランク上にしても良かったですね。寝袋をもっとスペックの高いやつを持って行くべきでした。コンフォートマイナス1度のやつだったんで。
鈴木:レイヤリングはどんな感じだったの?
長田:アイスブレーカーのメリノウールのロングスリーブに、パタゴニアのR1。その上にフーディニのパワーフーディ。行動中はアークテリクスのベータSLというシェルを着てました。停滞中のダウンはフェザードフレンズのヘリオスジャケットです。


笈川:テントはプレテントのボーダーだったんですね。
長田:上部にベンチレーションもありますし、インナー左右にもメッシュになる小窓があるんで、万が一ドカ雪が降ってテントが埋まった場合でも通気を確保できるという理由で選びました。ベスタビュール(前室)をストックで持ち上げられるんで、煮炊きもしやすそうですし、クロスポールで強度も高いし、短辺が開口部なので厳冬期に向いていますね。
鈴木:ベスタビュールが着脱可能なのも便利だよね。夏に尾瀬に行ったときは、軽さ重視でベスタビュール無しで行ったもん。
笈川:ギア類で冬山で役立ったなあというものはあります?
長田:地味だけどエバニューのフライパン。雪を溶かして水を作る時に、スコップみたいに使えて便利でしたね。


鈴木:そもそもなんで1月6日だったの?
長田:月齢ですね。月明かりで白く輝く穂高連峰を獲ってみたい、というイメージがあったんで。その日は21時に東側の山の上に月があがってくる月齢で、その月明かりが穂高連峰にたいして順光になる日を狙ったんです。ただ、満月だと明るすぎて星が消えちゃうので、満月から2、3日ズラしたんです。
鈴木:そうやって撮影したのがメインカットになってる写真なんだね。よく当てたねえ。雪でもダメだし、曇っても撮れないし。
笈川:美しい……。
長田:ちょっと悔やまれるのが、もっと真っ白な穂高連峰を期待していたんですけど、今年は雪が少なかったんですよね。
鈴木:じゃあ、リベンジだね。
長田:いまはたぶんもっと雪が付いてるはずですよ。とにかく感動がすごかったので、いろんな人に行ってみて欲しいなと思いました。
鈴木:たしかに、聞いてたら俺でも行けそうな気がしてきた。
長田:今度はみんなで行っちゃいます?
鈴木:とりあえず日帰りで!
笈川:いや、それじゃあもったいないですよ。
鈴木:おっ?
笈川:日帰りで冬の上高地に行って、帰りは坂巻温泉で一泊して温泉三昧でしょ。
鈴木:それだ!
長田:それじゃあ、夜の撮影できないじゃないですか……。
櫻井 卓