釣りを通じて山を深掘る

4歳のころから釣りをはじめたというLOGメンバーのOSA。釣りは彼にとっての外遊びの原点だと言います。大人になってからは、ブラックバス釣りに夢中になり、船舶免許をとって毎週のように河口湖に通い続けた時期も。そんなOSAが最近ハマっているのが渓流釣り。それを通じて、山と川の繋がりなどの解像度があがり、自然をより深く楽しむことができるようになったそうです。
地元の釣り仲間との渓流釣りの様子を追いながら、OSAの釣りとの向き合い方についてインタビューしてみました。


渓流釣りはいつぐらいから?
OSA:ここ3年くらいです。登山道の脇などにある川を見るたびに、釣りも楽しそうだなとは思っていたんです。山も釣りも楽しめる渓流釣りは自分にぴったりな遊びでした。
やっぱり山歩きと組み合わせるんだったらテンカラ?
OSA:テンカラにもすごく興味はあるんですが、いまはルアーですね。おもにイワナを狙うんですが、捕食を誘う毛針と違って、ルアーの場合は、イワナが縄張り争いするという特徴を利用した釣り方なんです。簡単に言うとリアクションで食わせるやり方です。自分が投げたルアーに対して魚が追いかけてくるのが見える瞬間はすごくアドレナリンがでますね。その動きに対して自分がアクションを起こして、食う瞬間まで目視できるんです。釣ってやろう! というよりは、魚に遊んでもらっているという感覚が強いですね。
どのくらいの頻度で釣りに?
OSA:隙間時間があれば行っちゃってますね。仕事前にちょっと近所の本流で釣って、休みの日は山に入るという感じです。地元の山梨県全域で使える釣り券というものがあるので、それを購入してます。年間2万5000円なんで、よく行く人にとってはかなりお得です。
最新の釣行でいうとどこに行ったんですか?
OSA:3月末に南アルプスの早川水系の源流部に行きました。


渓流って聞くと、やはり最近は熊が出そうだなというのがあるけど、どんな対策を?
OSA:その釣行はLOGでも発売予定の熊脅しのテストも兼ねていたんですが、これがあるとすごく安心感がありました。中に爆竹を仕込んで使うんですが、かなり大きな音がでます。サルや鹿も一発で逃げていくことがわかったんで、熊にもかなり効果があるのではないかと思います。特に沢の近くだと水音がすごいので、クマ鈴だとあまり効果がないのかなと。素材がオークなので、バックパックなどにつけてもアクセサリー感がありますよね。

装備はどんな感じなんですか?
OSA:この時は日帰りだったので24リットルのバックパックに、防寒具と食糧をいれて、あとはルアーやロッドなどの釣り道具ですね。沢靴はシマノのジオロックを履いてます。この沢靴がすごく良くて、摩耗したときはもちろん、行く場所の地形に合わせてフェルトとビブラムのソールを自分で張り替えることができるんです。例えば川の中に頻繁に入るような場合はフェルトソール。山歩きが多い場合にはビブラムという使い分けができるのがすごく気に入っています。
道具のこだわりは?
OSA:ルアーはバルサ製のミノーが好きで、ビルダーさんが手作りしているものを使ってますね。プラスチック製よりも浮力があるので操っていて楽しいんです。
今回はなに狙いだったんですか?
OSA:イワナなんですけど、その中でもヤマトイワナという種類です。南アルプスなどの標高の高い源流部にしかいない、いわゆる原種と呼ばれている稀少なイワナですね。実はずっと憧れてたんです。

写真みると、けっこう良いサイズ釣ってますね。
OSA:そうなんです。釣れちゃいましたね。尺イワナ(30cm)にちょっと届かないくらいのサイズだと思います。この日は日帰りだったので、すべてリリースしましたが、テント泊などが絡んだら1匹くらいいただくこともあります。
釣り味としてはニッコウイワナもヤマトイワナも変わらないわけですよね? なぜわざわざ源流部を目指すんですか?
OSA:やはり山深さが魅力ですね。それから源流部のほうが考えなければならないことも多くなってきます。例えば雪代(春先に積もった雪の雪解け水)が入ると、イワナが不活性化して、釣りにくくなります。だから、雪代がどのくらいの時間帯に入って来そうか、そもそも雪が多いエリアなのか、そういう山の要素をいろいろと推測していく楽しさがあります。僕の場合、釣るということにそこまで重きを置いていなくて、山に入るひとつの動機としての釣りという感じです。


釣りを通じて、山の見え方とかも変わってきた?
OSA:今回のエリアにかぎらず、登山で得た経験値は釣りでも活きます。稜線の状況を知っているから、谷間の状況も予想しやすくなるんです。それをもとにフィールドを選んでいく。釣りだけやっていたら、理解できなかったことは多いと思います。たとえば、山に登っているから、雪が多い山なのかどうか判断できますし、南面か北面かで雪解けの時期や水温なども変わってきます。それを見越して寒い時には水温が下がりにくい南面の沢を狙う、といった具合です。登山をすることで、釣りが奥深くなっているのは間違いないと思います。逆もまたしかりで、登山は素晴らしい景色を堪能しながら稜線歩きなどができますし、樹林帯の空気の美味しさなど魅力がたくさんあるんですが、僕としてはもう少しだけアクティビティ感が欲しかったところがあるんです。登山に釣りが組み合わさることによって、より深く、より複合的に山と関われるようになった感覚があります。

今後はどんな釣りをしていきたいんですか?
OSA:ロープを使ったり、沢登り要素強めの釣りもやってみたいですね。あとはパックラフトで下って、支流を登って釣るとか。釣りをしながら、川の最初の一滴を見に行くなんていうのも魅力的ですね。黒部源流も行きたいですし、東北の沢にもすごく興味があります。渓流釣りをすることで、一気に目線が広がって、やりたいことや興味の対象が次から次へと生まれてくる。それがなによりも、渓流釣りをやって良かったなと思う点ですね。
釣りを通じての夢などありますか?
OSA:これはちょっと夢というか、壮大な話になってしまうんですが。僕は渓流だけでなく、中流、本流、湖でも釣りをするんですけど、渓流だとほとんどゴミは見かけないんですが、下流にいくごとにどんどんゴミが増えていくんです。とうぜん最終的には海まで流れていってしまいます。そうしたゴミをどうにかできないかなというのは、1人の釣り人として思います。次世代の人にも、綺麗な場所で釣りをして欲しい。それに対して自分がどういうアクションを起こせるのか? LOGとしてゴミ拾いに関する活動をしていくのか、自治体などと協力するのが良いのか。そういうことは今、いろいろと考えています。

TSUYOSHI YAMAMOTO
アウトドアを愛するすべての人が集うフェス、サンロクマーケット代表。クロマグロのキャスティングから源流域まで、価値ある一匹をルアーフィッシングで追い続けている。
Text: 櫻井 卓