neru mag vol.34「オリジナルテント / CAVE」
年末からずっとバタバタしてましてすっかりご無沙汰してしまったネルマガです。
CAVEが2月10日に無事倉庫に入り、16日から順次発送となりました。
早速CAVEを張っていただいている投稿を見ると涙が出そうになりました。
いや、ほんとに。
ここまで、長かったような短かったような。。
発売前に書こうと思っていたネルマガも遅れてしまいましたが、せっかくなので、このタイミングでまとめておこうと思います。
最初にテントを作りたいと思ったのは2017年頃だったと思います。
当時、国内でテントを作れないかと色々あたってみましたが、世界中の多くのテントが中国で作られていること、ポールは韓国の独壇場、日本で一貫生産するのは難しいという現実を突き付けられてしまいました。
(作れる工場もありましたが、希望のスペックは難しく。。)
テレビもそうだし、半導体もそうですが、日本でモノ作りをしなくなったツケは、何年も後になって回ってくる。
そうなってからだと、元に戻すのは相当キツイ。
コストだけで判断してはいけないこともあると思うんです。
メーカーに勤めていたから、そのことは身に染みています。
そんなこともあって、キャンプを通じて日本のモノ作りに貢献したいというのがneru design worksのコンセプトでもあるわけですが。。
日本製のテントだって、まだまだ諦めた訳ではありません。
いつかmade in JAPANのテント作りたいですね。
と、ちょっと脱線しましたが。。
TFS(THE FREE SPIRITS)のロボテックドームを個人輸入したのが2018年か2019年。
そこから紆余曲折ありながらも、TFSにテントを作ってもらえることになってワイヤーとビニールで模型を作ったのが2019年4月。
その後、サンプルを作成して修正をしながら、最初にテントサンプルをInstagramにpostしたのが2020年6月。
そして、コロナと世界的なポール不足。。
2020年末に予約希望を募って、ほぼ1年後の2021年末に量産開始。
2022年2月やっと発売。
いや、やっぱり長かった(笑)
せっかくなので、長かった数年を振り返ってみようと思います。
まずはCAVEのコンセプト作り。
日本って世界的に見ても珍しいと思うのですが、所謂ファミリー幕と言われる大型幕の品揃えが豊富。
一方でソロ用の小型テントは世界中で販売されているのでこちらも選択肢は豊富。
であれば、狙うは空白地帯になっている中途半端なサイズ。
個人的に欲しかったのは、ソロでギア類も収納できて、デュオでも使える。
お座敷スタイルにすればファミでも。
そして、せっかく四季のある日本にいるのだから、キャンプを年中楽しみたい。
冬のキャンプを考えるなら薪ストーブが使えること、結露しないことが必須。
形状は、ワンポールが単純だし、作るのも簡単。
でもデザインにはこだわりたかったし、居住性も強度もと考えるとドーム型一択。
こう書いてしまうと簡単なんですが、これを実現するのは結構大変でした。
まず、結露しないドーム型っていうのが難しい。
結露しないようにするためにはインナーテントを入れてダブルウォールにする
のが一般的ですが、それだと使い方に制約がでます。
そうなると、コットン(ポリコットン)にするしかないのですが、ドーム型の場合、天井部分はポールが地面に並行になりポールに負荷がかかりやすく、重量に弱いんです。
つまり、できるだけ軽くて強度があって、最低限の耐水圧があるコットン(ポリコットン)生地がないと実現できない。
でも、探してもそんな生地はない。。
薪ストーブも大手メーカーは煙突用の穴は開けづらいんですよね。
皆さんご存知の通り、幕の中では火気厳禁。
薪ストーブの使用は推奨していない。
火器の使用は完全に自己責任。
色んなリスクを考えると、煙突用の穴を開けないというメーカーの方針は理解はできます。
そして、デザインと強度。
ただでさえポールが入手しにくいのに、このサイズのテントで6本もポールを使うのは多すぎる。
そして、ドーム型の天井付近のポールには負荷がかかるためコットン素材のドーム型テントは世の中に存在しない。
上記の3つは、企画段階で分かっていた課題です。
実際には作り始めてから色々課題が出てくるのですが。。
まずはこの3つの課題についてのアプローチを振り返ってみます。
生地については、無いなら作る。
無いなら作るのはいつものことですが。。
コットンを使って、薄く、軽く、高密度である程度の耐水圧のある生地。
矛盾する要素を実現するためには普通に作ると実現しないので、糸から加工しました。
オリジナルの生地を作ると言っても、普通は糸から加工することは稀です。。
矛盾する要素を実現するために、長所と短所が混在する生地が出来上がった訳ですが、普通のメーカーなら採用しない生地だと思います。
簡単にいうと短所=生地ロスが多いということなのですが、コストに直結するのでメーカー的な考え方だと採用はしません。
でも、その短所よりも長所の方が重要だと思うんです。
今の日本は極端にリスクを怖がってしまうあまり、リスクを排除することにばかり目がいってしまいます。
短所より長所が勝るなら、それを生かすことも大事だと思うんですけどね。。
短所のない平均点なモノ作りも、時に必要ではありますが面白くない。
次に薪ストーブの話。
テントの中は火器厳禁です。
でも冬にキャンプをするなら、皆さん何かしら火を使いますよね。。
メーカーとしては自己責任でとしか言えないのは仕方のないことだとは思います。
想定外の使い方をされる可能性がある以上、火を使っても良いとは言えないです。
でも、薪ストーブを使いたい人は、自分でテントに穴を開けたり、煙突ガードを作ったりして薪ストーブを使う訳です。
自分も昔同じことをしていましたけど、よく考えたら危ないですよね。
火器厳禁。
火を使う場合は自己責任だったとしても使うことが分かっているのなら、できるだけリスクを排除しておくというのもメーカーとして考え方の一つだと思うんです。
だから、CAVEについてもneru design worksとしては火器厳禁。
火の使用は自己責任で。
というのが前提ですができるだけ安全に使ってもらえるように、ポリコットン生地だけど生地表面はコットンをできるだけ多く露出させる工夫をし、煙突ポートは耐熱樹脂と難燃生地を使っています。
これもある意味リスクの話なんだと思います。
火器厳禁、薪ストーブを使えない仕様でテントを作れば、メーカーとしては完全に責任リスクを排除できていますが、実際に使う場面を想定するならリスク軽減にはなっていないですよね。
むしろ、自己流で薪ストーブをインストールする方が危ない。
賛否両論あるとは思いますが、責任範囲を明確にした上で、自己責任で使用する場合も想定してモノ作りをしても良いのではないかと思います。
もちろん、不特定多数に販売する方式ではなく、ガレージブランドという立場で、皆さんと近い距離で販売できるからこそではありますが。。
繰り返しになりますが、テント内は火気厳禁。
お使いの際は自己責任ですが、定期的な換気、一酸化炭素警報器は必須。事故のないよう楽しんでください。
そして、もう一つ。デザインと強度。
今回製造をお願いしたTFSはテント作りのプロです。
基本的に彼らの言うことはもちろん正しい。
だから、入口の高さが低いとか、ポールの数が多いとかポリコットン素材のドーム型はポールに負担かかるから、やめておいた方が良いとか彼らの指摘は全て正しい。
でも、モノ作りをする上で、コストや使いやすさ以外にも大事にしていることがあります。
ちょっと不便でも使いたくなるモノだってあると思うんです。
CAVEについては、入口はあえて低く設定しています。
かまくらのようなイメージですが、秘密基地のようにテントの中で過ごすには、オープン過ぎない方が良い。
一方で、一般的なドームテントは雪山のベース基地として使用されていることもあり、通常、入口の足元は立ち上がりがあります。
でも、キャンプで使うなら入口の足元は立ち上がりなく、テント生地が繋がっていない方が良い。
間違いなく引っ掛けるし、子供に踏まれますからね。
だから、こちらは逆にオープンに。
そして、重いコットン生地でドーム型を作るためには、ポールの強度が必要。
ポールを多くしてでも実現したい。
何より、ポールを多くすることで、より細かいデザイン表現が可能になる。
neru design worksのコンセプトは自分の作りたいモノを作る。
無駄や非効率を否定してしまうと生まれないモノがあるということです。
そうやって、課題を整理しクリアしながらCAVEの基本コンセプトを固めた訳ですが、もちろん試作してから出てきた課題もあります。
これが書き切れないほどあるわけですが。。
マニアックなことは省略して分かりやすいことを少し振り返ってみます。
このサイズのテントに6本のポールを使用したことで、美しいフォルムと強度を実現することができましたが、その分だけポールを通すスリーブにもかなりの負荷がかかることが判明しました。
スリーブを強化するために、最終的に生地を二重にしつつ、CORDURAを使用することになったのですが、コストのことを考えたら普通はやらないです。
このCORDURAのアイデアは工場からのアイデアでした。
この頃になると、TFS側もコンセプトを理解してくれて、より良いモノを追求する良いチームになっていました。
こうなれば、大抵のモノ作りはうまくいくんですよね。
その他にも、散々悩まされたのがポールの供給不足。
苦肉の策でDACとYUNANのポールを両方採用した訳ですが、実際のところポールとしての性能に大きな差はありません。
むしろ今回採用したスペックならYUNANの方が良いと個人的には思っています。
ブランドで言えばDACが好きな人の方が多いかもしれませんが。。
1つのテントに2種類のポールを採用するなんて、普通のメーカーならやらないと思いますが、この辺もガレージブランドならではかもしれません。
ポールについては、また別の機会に色々書きたいと思います。
あと悩んだのがテントの色。
小さな生地サンプルをいくら眺めてみても分からないんですよね。。
結局、実際にテントを作って決めることにしたのですが、そのためだけに2色の生地を染めるのは値が張りましたが致し方なし。
グレーのテントサンプルを見てすぐにコレだと決まったので
結果オーライですね。
そして最後まで悩まされたのが、コロナとコスト。。
コロナの影響で納期には振り回されました。
そして途中ポールを含め様々な要素がコストUP。
まぁ、これについては頑張りようがないので泣くしかありませんでしたが。。
その他に、海外でのモノ作りや、輸入などやったことないことだらけ。。
その都度、色んな方に助けてもらいながら、なんとかここまできました。
一人だったらきっと販売は実現しなかったと思います。
この場を借りて関係者の皆様にお礼を申し上げます。
バラバラと苦戦したことを羅列しましたが、裏を返せばそれがそのままCAVEの特徴になっているんじゃないかと思います。
難しい課題を解決できれば、それがそのまま強みになりますからね。
どうせやるならメーカーができないモノ作りをしようといつも考えているので、多分このやり方が自分には合っているんだと思います。
まだ書きたいこともありますが、長くなると読んでもらえないので最後に、今後の展開についてもまとめておきます。
2ndロットにつきましては、既に予約を締め切っています。
ポールは発注済みで7月に生産を予定していますので、ご予約頂いている皆様
もう少しお待ちください。
3rdロットについては、今のところ生産未定です。
予約希望数がロットを満たせば生産する予定ですが、ポールの納期が1年〜2年かかります。
お支払いいただいてから納品まで1年以上かかってもいいという方が果たしてどれくらいいるのか。。
要はポールの納期が問題なので、今これを解決できないか色々と考えているところです。
あと、Instagramでも少しアップしましたが、今年シルナイロンを使ってCAVEの幕だけ作成しようと考えています。
ポールはありませんので、着せ替えってことですね。
CAVEをお持ちの方が対象にはなりますが、夏と冬、雨と晴れ、色の気分、使用シーンに合わせて使い分けができると思います。
加えて、インナーの要望も多いので、こちらも作ろうと思っています。
いずれにしろ、ポールの問題が解決すれば、色々とやりたいことができるようになるので、どうにかできないか、ちょっと頑張ってみようと思っています。
久々のネルマガでちょっとダラダラ書いてしまいましたが、本当はもっと書きたいことがたくさんあるCAVEです。
色んな思いが詰まったテントなので、CAVEでキャンプを楽しんでいただけると嬉しいです。
Author : neru