登らない尾瀬

 

Text: 櫻井 卓

 

ここ3ヶ月ほどイベント続きで、山に行けていない! というBambooShoots甲斐さんのお誘いで、LOG笈川、ライター櫻井の3人で今回向かったのは尾瀬。

最初に言っておきます。登りません。

尾瀬には至仏山、燧ヶ岳と2座の百名山があるのだが、そのランドマークをあえてスルーすることで、新たな尾瀬の楽しみ方が見えてくるはずだという目論見があった。

今回提案したいのは、ピークを目指さない尾瀬。登るかわりに、歩いて、食べて、飲んで、泊まる。そんな避暑地としての尾瀬だ。

 

 

「もう、飲んじゃう?」

鳩待峠でバスを降りた時点で、甲斐さんが言う。この鳩待峠は、最近リニューアルされたエリアで、星野リゾートが経営している宿泊施設と、売店、と呼ぶにはお洒落すぎる「はとまちベース CaféShop by 星野リゾート」が新しくオープンしているのだ。

品揃えも豊富で、甲斐さんが手に取ったのは地ビール。

「もちろんイエスです!」と笈川がすぐさま乗っかる。

ここからはユルく下って行くだけだし、まあ、良しとしましょう。

 

 

「甲斐さん、そのバックパックって……

LOG屈指のギア好きである笈川が目ざとく反応する。その日甲斐さんが背負っていたのはビンテージのゴッサマーギア。甲斐さんはこうしたビンテージのアイテムを集めていて、それをアーカイブとして自分の作るアイテムに落とし込んでいるという。


「昔あって、いま無くなってしまったものの中にはいまだに通用する傑作ディティールもたくさんあるから、そういうものからヒントを得ることは多いんですよ」と甲斐さん。古い物と新しい物をリミックスしていくのが甲斐さんの物作りの真骨頂なのだ。

 

 

鳩待峠から、次の山小屋がある山の鼻エリアまでは、ゆっくり歩いても1時間半程度。道中にはミズバショウなどもあるが、残念ながら時期がまだちょっと早い。そして山の鼻につくと、甲斐さんが一言。「ここでも飲めるかな?」


まさかの山小屋ハシゴ酒!? 褒められたことじゃないかもしれないけれど、どこにも登頂しないわけだし、この先の道に危険箇所はない。まあ、こういう楽しみ方をしても許される優しさが、尾瀬にはある。


「か、甲斐さん、まさかのロング缶!?

LOG随一の飲んべえ笈川も、さすがに驚いているけど……

 

 

ここには至仏山への分岐もあるけど、華麗にスルーして尾瀬ヶ原エリアへ。訪れた7月頭は、水芭蕉はまだだったけれど、カキツバタが咲き乱れ、ニッコウキスゲもチラホラ。モウセンゴケという食虫植物もいる。普段あまり植物に興味のない2人も、日本屈指の尾瀬のお花の前では、腹ばいおじさんズと化し、写真を撮りまくっている。

 

 

よく整備された木道を歩いて行く。心地良い風が吹き抜け、下界よりもずいぶんと過ごしやすい。正面に燧ヶ岳を眺めつつ、龍宮小屋を過ぎたら、今日の目的地である見晴エリアまではすぐだ。見晴は、昭和30年代頃から小屋が建ち始め、いまではここだけで小屋が6軒あり、毎年多くの尾瀬LOVERが訪れている。

 

 

この日は尾瀬小屋で豪華ランチ! なんと通し営業。8000円以上でカードも使えるから、ここで豪遊! というのが今回のメインだ。

それぞれ、フォー、ハラミ丼、ガパオライスと、山小屋とは思えないメニューを注文。生ビールはもちろん、お酒も各種揃っているし、スイーツもある。ここは山だっけ? というクオリティの高さだ。ちなみにこの尾瀬小屋には日帰り入浴もある。まさに尾瀬リゾート。

 

 

尾瀬は夕方以降が良い。バスが終わって、泊まりの人しかいなくなるから、独占感があるのだ。美しい尾瀬ヶ原を眺められるデッキで、甲斐さんは先ほどからグイグイいっている。ふと笈川のほうをみると、まさかのほろよいチョイス。たしかに顔はガン酔いだから、ちょっとペースダウンしたほうが良いかもね。

 

 

おおいに尾瀬リゾートを満喫したあとは、テント場に移動。今日は我々以外に1人いるだけというほぼ貸し切り状態。甲斐さんはプレテントのピンクを愛用。もともと甲斐さんがLOGに興味を持ってくれたのも、このピンクテントがあったから。気温も野外で過ごすのに最高。蚊やブヨなどの気配も少ない。これは周囲を飛び回っているトンボのお陰だ。

 

 

夕食は、各自持参した山飯タイム。なんだか笈川のほうから香ばしい匂いがすると思ったら、まさかのチャーハン! 


「冷凍チャーハンって、保冷剤にもなるから良いんですよ。登らないから重さもそんなに気になりませんし。これもありますよ」と笈川が取り出したのは、日本酒。しかも瓶でもってきてるし……

 

 

「オイちゃんのそのケースいいね」と甲斐さんが反応したのは、LOGの「TL ROLL BAG L」。ダイニーマリップストップ素材のロールバッグで、笈川は山での食材入れに使っている。中綿入りのインナーが付くので、簡易的な保冷バッグにもなるし、クッション性もあるから、今回みたいに瓶を守るのにも良い。甲斐さんはBSSDCFスタッフサック。「クッカーなどは横長のほうが収納しやすいですよね」という意見に一堂納得。

 

 

食後もゆるゆる飲み会は続き、急に笈川が静かになったと思ったら、ベンチで釈迦寝じゃん。今日はこのへんでお開きにして、それぞれのテントに戻ることに。尾瀬はたくさんの熊の生息地。念のため食料などはベアキャニスターに入れる。人間側が配慮する、というこの考え方には強く共感するから、日本の山旅でも最近は積極的に持って行くことにしている。

 

 

翌日。雨音で目が覚める。

すばやくテントを撤収して、雨が落ち着くまで、尾瀬小屋で優雅なモーニングコーヒータイムを堪能してから出発。

ここから鳩待峠までのピストンがメジャーなんだけど、実は大清水にクルマをデポしているので、尾瀬沼を抜けて下山が可能。このやり方だと一泊二日で尾瀬エリアを満喫できてしまうのだ。大清水から戸倉の駐車場までバスもあるので、2台体制を取れない場合はその利用もおすすめ。ただしバスの運行時間には注意が必要だ。

 

 

燧ヶ岳の分岐も華麗にスルー。

このあたりは美しい樹林帯が広がっていて、昨日の尾瀬ヶ原とはまったく異なる風景。この先には尾瀬沼が待っているし、変化が多い良いトレイルだ。甲斐さんと笈川はルーペで植物を観察したりしている。普段の山登りとは違って、体力的にも余裕があるから、周囲の自然に目を向ける余裕があるのだ。

 

 

2つの峠を越えると、目の前にドーンと尾瀬沼が広がる。昨日までとは、また打ってかわった景色。ちなみにこの尾瀬沼には、巨大イワナが生息しているという噂もあるけど、霧で霞んだ神秘的風景を見ていると、いかにもいそうな雰囲気だ。

 

 

その後は、沼沿いをぐるっと周回するルートをとって、大清水方面へと下りていく。


「次はどこで宴会しますかねえ」


笈川と甲斐さんは、すでに次の山行の相談を始めている。

登山といっても必ずしもピークハントじゃなくても良いはずだ。目線を変えてもう一度地図を見てみると、こういう遊び方ができる場所はけっこうある。例えば美ヶ原や霧ヶ峰、立山の雷鳥沢や阿蘇の法華院温泉。各種ロングトレイルも、エリアを選べばひたすらのんびりする場としても最適なのだ。

 

 

 

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